箱という存在は、どうしてこうも魅力的なのでしょうか。何かを買ったときに、それがどんな箱に入っているのか、紙やグラフィック、身蓋なのかスリーブなのか……気になるのはぼくだけではないと思います。ジャケ買いならぬ箱買い、をすることもしばしば。盗賊が狙うのは宝箱、大切なものは箱にしまわれるのです。
SKETCHやPOCKET、BANKといった革製品も、T&Fオリジナルの紙箱に入っています。この箱は、ニュートラルな白の板紙をそのまま使って、上に紙を貼らずに、ふたの正面中央に濃茶色の箔押しをしただけで仕上げたもの。厚手の紙をハーフカット(紙厚の半分の深さで切り込みを入れる加工)しているので、直線がとてもキレイに出ています。こだわりの箱をつくっているのは、横浜に工場がある竹内紙器製作所です。
箱好きとしては、中身を取り出した後にもぜひ他の何かで満たしていただきたい、あるいはいつの日か、何かに流用するため待機させておいてほしい、という思いはあります。でも、家主を失って空室となったら捨てられてしまうのもまた、箱の運命。そんなことも全部ひっくるめて、箱の魅力なのでしょう。
ハーフカットして折り曲げられた美しいラインと、ブロンズ色の針金で留められた箱の四隅。静かな個性が感じられるディテールです。このバランス感覚がたまりません。