いつも身のまわりに、当たり前のようにある「紙」という存在。
紙(Paper)の語源として知られるパピルスは、古代エジプト文明において書写材料として使用されていた水草のことで、皮をはいだ茎を乾燥・プレスしたものでした。紙の定義は「植物などの繊維を細かく叩解(粥状にときほぐす)して固めたもの」とありますので、その点ではパピルスは今で言うところの紙とは少し異なるものでした。一方、発見されている最古の「紙」は、紀元前1世紀頃に中国の古墓で発掘された、地図の描かれた麻の紙で、放馬灘紙(ほうばたんし)と呼ばれています。そして、それよりもっと以前、紀元前6~7世紀の中国では、文章を記録するのに絹帛(けんぱく。絹布)を紙の代わりに使っていたようです。「紙」の起源を遡ると「布」だった、という事実はとても興味深いと思います。
T&Fのバッグやダイアリーカバーに使っている「紙布(しふ)」は、その名の通り、紙の撚糸で織られた布のこと。ヨコ糸に紙を撚った撚糸を、タテ糸にはオーガニックコットンを使っています。もともとは生成り色なのですが、草木染め加工を得意とする京都の工場で、オリジナルのグレーに後染め加工をしてもらいました。タテ糸のオーガニックコットンに比べ、ヨコ糸の紙撚糸が濃く染まるため、奥行きのある色になっています。また、紙撚糸の原料となるパルプには、奈良吉野杉の間伐材が使われています。近代化による木材の需要減少などによって国産材の使用量は減り、生業としての林業も衰退。森に人の手が入らなくなり荒廃する森林を保全するため、枝打ちや間伐を行い、健康な森を取り戻す……この紙布は、そうした活動の一部から生まれました。
ことばを書き残すために布から進化した紙が、いま再び布となってわたしたちの生活の道具になっていく。紙と布は、きっとわたしたちが考えている以上に親密な関係なのかもしれません。
月間ダイアリーセット〔紙布〕6,600円+税
週間ダイアリーセット〔紙布〕7,000円+税
バッグ〔ボーリング〕M 36,000円+税
バッグ〔ボーリング〕L 42,000円+税
※本製品は完売しました。